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rapanse’s diary

ポストモダンの視点で絵画を楽しみ、沖縄のシマ社会と芸能を楽しむ

フランス革命の前と後を生きたゴヤ

ゴヤ フランス革命

フランシスコ・デ・ゴヤ(1746-1828、スペイン )はフランス革命(1789年)の前後を生きた画家だった。

フランス革命は、ヨーロッパ社会の画期をなす革命だった。ヨーロッパ社会はそれ以降、王侯貴族の支配する社会からブルジョワジーの支配する社会へと大きく変化していくのである。

ゴヤはその二つの時代を生きた画家だった。モーツアルト(1756-1791)より10年先に生まれ、ベートーヴェン(1770-1827)よりも一年後に亡くなっている。つまり、ゴヤの生きた時代に、モーツアルトベートーヴェンの生涯が含まれるのである。

ゴヤは宮廷画家だった。二つの絵を比較して、ゴヤ自身の王侯貴族に対する視線がどのように変化したのかをみてみよう。

一つ目はフランス革命の前に描かれた王侯貴族の家族だ。

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ゴヤ作《ルイス・デ・ボルボ親王一家の肖像(ドン・ルイス親王の家族)》(1783年)マニャーニ=ロッカ財団

絵は、親王の妻が髪結師に就寝用の調髪をさせるところを描いている。カード遊びをしているのがドン・ルイス親王で、画面右側には執事や給仕らが描きこまれている。右から3番目の男性が、イタリアの宮廷音楽家ルイジ・ボッケリーニだとされる。左下には、ゴヤ自身の姿も描かれている。

音楽家と画家の間に親王の家族が描かれている。それは親王が芸術の庇護者であることを示している。親王を見上げるゴヤの視線から、ゴヤ親王にリスペクトを捧げているのがわかる。

次の絵はフランス革命後の王侯貴族の家族の姿だ。

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ゴヤ作《カルロス4世の家族》(1800-1801年頃)プラド美術館マドリッド

王侯貴族を神聖視する視線は、この絵には見られない。画面中央のスペイン国王カルロス4世はただのお人よしに見える。そして実際には妻が夫を支配していることが絵を通してわかるようになっている。彼女は家族の真ん中に陣取っている。誰が実質的な支配者であるのかを、ゴヤは忠実に描いているのだ。

ゴヤ自身の姿は、背後の暗闇の中で、国王家族を冷静に眺める画家として描かれている。

フランス革命の前には王侯貴族の姿は神聖化されて描かれている。フランス革命の後ではそのような神聖化はなく、普通の人間として描かれている。妻に支配される夫という家族の姿だ。王に対するリスペクトをそこに見ることはできない。

フランス革命の前と後では、王侯貴族に対する視線が、これほどまでに変化するのだ。