rapanse’s diary

ポストモダンの視点で絵画を楽しみ、沖縄のシマ社会と芸能を楽しむ

ルーベンスとヴァトー  《パリスの審判》

アントワーヌ・ヴァトー(1684-1721、フランス)の描く《パリスの審判》は、ピーテル・パウルルーベンス(1577-1640、フランドル)のそれをもとにしていたらしい。

絵画の主題は、トロイアの王子であるパリスが、神々の女王ユーノー、知恵の女神ミネルヴァ、愛と美の女神ヴィーナスという三美神のうちで、誰が最も美しいかを審判するというもので、ローマ神話の一つだ。

ヴァトーは36歳で夭逝した画家である。《パリスの審判》はヴァト―の最晩年期に描かれたものだ。

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ヴァト―作《パリスの審判》(1718-20年頃)ルーブル美術館

パリスはヴィーナスに向けてリンゴを差し出している。パリスの足元には犬がいる。後ろ姿の女性がヴィーナスだ。そばにはキューピッドがいる。上空で悔しがっているのがユーノーで、彼女のシンボルの一つである孔雀を従えている。兜で武装しているのがミネルヴァだ。「メドゥーサの首」の像が貼りついた楯を手にしている。

次の絵は、ルーベンスの《パリスの審判》だ。

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ルーベンス作《パリスの審判》(1632-35年頃) ロンドン・ナショナル・ギャラリー

パリスがリンゴを差し出しているのは、三人の女性の真ん中にいるヴィーナス。パリスの足元には犬がいる。ヴィーナスの後ろにはキューピッドがいる。左の女性はミネルヴァで「メドゥーサの首」の像が貼りついた楯を持っている。右側の女性がユーノーで孔雀を従えている。

パリスの足元の犬から孔雀、「メドゥーサの首」の楯、キューピッドに至るまで、ヴァト―の絵は、ルーベンスの絵で描かれた記号をていねいに取り入れて、自分の絵の中で再現している。

ヴァト―の加えた変形が、あまりにも大胆であるため、作品がルーベンス本歌取りになっているということに気づきにくい。この大胆な変形が、ヴァト―の絵を印象深いものにしている。

17世紀のルーベンスの絵と18世紀のヴァト―の絵を比べると、女性の理想的な体形が変化していることがわかる。17世紀までの女性の理想的な体形は、豊穣を表わす豊かな肉体であった。ところが、18世紀にはそのような理想像は影をひそめる。

女性の裸体は、豊穣のシンボルではなくなっていくのだ。