rapanse’s diary

ポストモダンの視点で絵画を楽しみ、沖縄のシマ社会と芸能を楽しむ

レンブラント――腹部のたるみと皺

レンブラントの描く女性の裸体画には、大きな特徴があった。それは皺のよった垂れ下がった腹部である。

そのような特徴は、油絵で示されることはあまりなかった。エッチング(銅版画)で思う存分に描かれたのである。

次の版画はレンブラント25歳の作品である。

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レンブラント作《土手の上に座る女》(1631年)

女性の顔は若い。おそらく20代の女性がモデルなのだろう。ところがその肉体は、腹部の突き出た球根のような肢体をしている。

球根のような女体は、15世紀、16世紀の北方ルネッサンスにおいて、女体の理想的形態とされたものだった。レンブラントはその球根のような肢体を復活させたのだが、それを若さや美の象徴としてではなく、実際の年齢以上に高齢化させて描くことによって、新しい裸体美を出現させたのだ。

次の《ディアナ》のためのデッサンと銅版画を比べると、レンブラントが実際のモデル以上に腹部のふくらみを強調していることがわかる。

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レンブラント作《入浴するディアナ》(1630-31)大英博物館

このデッサンをもとにして次の銅版画が制作される。

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レンブラント作《入浴するディアナ》(1631年)

モデルの女性と比べると、銅版画のディアナの腹部は堂々としている。レンブラントは、球根のような女体を描くことによって、女体のなまめかしさを復活させた。それと同時に、球根のような腹部に、たるみと皺を与えた。

そのことによって、女体のなまめかしさからエロチックな側面は剥ぎとられ、女性の裸体は、高齢者のような思慮と智恵を象徴するものになる。

レンブラントは、北方ルネッサンスの伝統的な表現を復活させながら、裸体画の表現に、新しい分野を切り開いたのだといえる。