rapanse’s diary

ポストモダンの視点で絵画を楽しみ、沖縄のシマ社会と芸能を楽しむ

球根のような女体

前回紹介したヴァン・デル・フースの描くイヴは、奇妙な体形をしていた。腹部が大きく突き出しているのである。球根のような肉体で、北方ルネッサンスにおける女体の理想的形態だった。

美術評論家ケネス・クラーク(1903-83、イギリス)の『ザ・ヌード』(高階秀爾他訳)によると、はっきりと年代がわかっている、球根のような女体を描いたのは、ランブール兄弟が最初の例だった。

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ランブール兄弟作《堕落と楽園からの追放》(1416年)シャンティイ・コンデ美術館

球根のような女体は、ファン・アイクによって極端なまでに表現されるようになる。

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ファン・アイク作《イブ(ヘントの祭壇画の一部)》(1432年)シント・バーフ大聖堂(ヘント)

15世紀のフランドル地方の女性たちが、実際にこのような体形をしていたわけではない。女性の理想的な体形として描かれているのである。

球根のような体形がなぜ理想の体型とされたのか、はっきりした理由はわかっていない。フランドル地方の画家たちが、イタリア・ルネッサンスで完成された女性像を知らないわけではなかった。しかし、理想の女体像を描くときには、イタリア・ルネッサンスの模倣をすることなく、球根のような体形を描いたのである。

このような球根の女体像は、女体のなまめかしさを表わすものでもあった。次の絵はヴァン・デル・ウェイデンによる《最後の審判》の一部だが、宗教画であるにもかかわらず、女体のなまめかしさも同時に表現されてしまったものだといえる。

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ヴァン・デル・ウェイデン作《最後の審判の祭壇画》細部(1446-52年)ボーヌ施療院

この女性は地獄に落ちる者たちの一人で、先に地獄に落ちた者に髪をつかまれている。本来は地獄に落ちる恐怖感が描かれいているはずだが、現代のぼくたちから見ると、女体のなまめかしさがきわだっているともいえる。

おそらくこのような女体のなまめかしさから、宗教改革は始まり、資本主義も醸成されていくのだろうとおもえる。